こうた、元気でな

※身バレ防止のため出てくる登場人物や内容については一部フィクションを含みます※


去年の夏場だったかな、暑い時期だったのは覚えてる。

クーラーをガンガンに効かせた家でふとんに包まりながらふとインスタグラムを見ていたら、「新しいアカウント」の表示でどこか見たことのある名前がおすすめされてきた。

 

「こうた」

 

見覚えがある名前、俺の友達に「こうた」という名前の男は一人しかいない。

フォローしている人を見てみると小学生の時の友達が12名くらい出てきた。

 

まじか、こいつ元気かな。とりあえずフォローしてDMを送ってみた。

 

「こうたってさ、あのこうた!?」

 

こうた、という男は小学生の時に家族ぐるみで付き合いのあったやんちゃ坊主だ。

当時こうたは非常に体が小さく、いわゆるチビだった。

女の子にちょっかい出して泣かせてしまったり、学校の先生にいたずらしたり。

自転車を乗り回してはよく車に轢かれていた。

 

でも、どこか憎まれない良いやつでザ・やんちゃ坊主といった感じだ。俺もよく殴り合いの喧嘩をしていたが喧嘩するたびに仲直りしてよく遊んでいたのだ。

 

それくらい仲の良い友達だったのだが、小学校6年生になるころには

俺が中学受験をしていたこともあり、塾通いのため疎遠になっていた。

小学校卒業後は合格した中学に通うため俺は引っ越しをしてしまったので、

それ以降一才会うこともなくなっていた。

 

…..

 

少し経つとDMで返事が返ってきていた。

 

こうた「うそだろ、もしかして、〇〇ってあの〇〇!?」

こうた「いますぐ飲み行こう」

 -不在着信-

 

といった返事が返ってきていた。電話が掛かってきていたので

すぐに折り返し電話をかけた。

 

俺「おすおす、久しぶり」

こうた「まじか、〇〇じゃん」

俺「こうた、だよねw」

こうた「そうw」

こうた「いま、歌舞伎町でいるから飲もうwはやくきてw」

 

そうだ、こういうやつだった。なんでも突然だし、強引に誘ってくる。

こいつのわがままに振り回されて当時はかなりイライラしてたな。

 

俺はちょうど暇だったのもあり、すぐに歌舞伎町へ向かうことにした。

呼ばれたのは歌舞伎町のメダカ系列の居酒屋。

お酒が安く、タバコが吸えるので喫煙者にはとてもありがたいお店である。

 

お店の前に着いたので連絡しようとインスタを開くと

 

「2階の一番奥の席」

 

とDMが来ていた。

久々の再会にちょっとドキドキしながらその場所に向かうと、こうたはいた。

 

こうた「うお〜〜〜〜久しぶり!!!!!」

俺「でかくなったなあ」

こうた「そうよ!」

こうた「いや〜〜〜やばい、〇〇じゃん」

 

久々の再会を喜んだあと、お互い席についてお酒を注文した。

 

チビだったそいつは俺と同じくらいの身長になっており、

いわゆるイケメンになっていた。

そういやこいつの親父もお母さんんもめっちゃ美形だったな。

 

そいつの話し方やテンションは昔と全く変わらない。

声はうるさく、おしゃべりでちょっと垢抜けた地元のヤンキーといった

風貌をしていた。

 

こうた「最近、なにしてんの?」

俺「普通に会社員よ、こうたは?」

こうた「会社やってる、小型のM&Aとか」

俺「おお、てっきり危ないビジネスとかやってんのかと思ったわ」

こうた「ああいうのは足洗ったんだよ」

俺「昔やってたんだw」

こうた「なんでもやったよ!薬のプッシャーとかさ」

俺「まじか〜〜wおもろいなw」

 

こんな感じで、お互い最近の近況報告をして盛り上がった。

そのあと、こうたがやっていた怪しい仕事について聞いてみた。

 

俺「そういや足洗ったとかいってたけどああいうのってそんな簡単に足洗えるの?」

こうた「いや、俺逃げた。ちょっとやばい仕事だったからさ。事務所に1000万くらい置いて逃げたんよ。19くらいの時かな」

 

俺「まじで?」

 

急にキーキーうるさかったそいつの声が急にやや静かになったのを感じた。

 

こうた「実はさ、19の時、関西に逃げたんよ。プッシャーの仕事も他人に胸張れるものじゃないし、なんなら犯罪だし。なんか色々しんどくなって今まで稼がせてもらった金全部返すって言って1000万円返して、全ての連絡先消して関西に逃げたんよ。だから、都内くるのも久々だし。小学生の時の同期であったのお前が最初。」

 

俺「なんかすごい人生だな」

 

こうた「だろ〜?子供もできちゃってたからさ。」

 

俺「まじ!?子供!?」

 

「破天荒」という言葉がよく似合う人生を送ってきていたらしい。

そんなこんなで2時間くらい飲んでラストオーダーが来た。

 

こうた「もう、こんな時間か!そろ解散しよか」

   「てか、やっぱお前最高だな。またのもうぜ!」

 

俺「もち!」

 

俺はこのあと二人で写真をとって、解散した。

俺自身もこいつとは話が合うなとおもったし、いまの俺を構成している

キャラクターの中にこいつの要素が入ってないといったら嘘になる。

その日は楽しく飲んで解散した。

 

…..

 

〜3ヶ月後〜

 

年末年始の頃だ。俺はちょうど帰省から帰ってきて、都内で友人と一杯飲んでいた。

久々にあいつから電話がきた。

 

こうた「〇〇!いまから地元で飲もう!小学校の時のYちゃんとKちゃんいるからさ!」

 

俺「うお!まじか。いいよ。」

 

YとKちゃんは当時あんまり話したことがなかったが

保育園から一緒で習い事も同じだったので親同士は非常に当時仲が良かったのだ。

連絡先も知らなかったので、会っていなかった。

このチャンスを逃したら二度と会うこともないだろうと思い、快諾した。

 

一緒に飲んでいた友人には事情を説明し、都内から急いで地元の方まで電車で向かった。

 

居酒屋に向かうと3人がいた。

 

Yちゃん「わ〜〜〜〜〇〇じゃん!!!久しぶり!!」

Kちゃん「うそ〜〜ぜんぜんちゃうやん」

俺「おす~」

 

久々の再会だったが、そこまで親しくなかった幼なじみはこんなもんかと思った。

YちゃんはいまAVに出演したりガールズバーの店長をやってるらしく、水商売で凄まじく稼いでいるらしい。

 

Kちゃんはアメリカでデザイナーをやっていて、このあとすぐアメリカに行くらしい。

 

YちゃんとKちゃんとは当時のクラスにいた他の人たちの噂話で盛り上がった。

ある程度盛り上がった時、急にYちゃんがこんなことを言った。

 

Yちゃん「あ、そう。こうたさ、こうたが関西いったあと私色々なそっち系の人からこうた知らないかっていまだに連絡来るんだけど、どうしたらいいのこれ。」

 

こうた「やっぱ連絡いっちゃってるか〜まじすまん。俺さ、実は色々やって逃げたって話したじゃん?あれ、誘拐、人身売買と殺人でさ。」

 

俺「うお そういや聞き忘れてたけど、なんで逃げたん?」

Yちゃん「…。」

Kちゃん「….。」

 

こうた「その仕事が結構やばくて。チーム6人くらいでやってたんだけど、ある程度稼いだあとくらいから急に先輩たちが一人づつ消されてってさ。さすがに俺もやばいと思って。先輩が残り一人になったタイミングで今まで稼いだ金1000万事務所に置いて関西逃げたんよ」

 

俺「そりゃそうなるか。」

 

Yちゃん「え〜でもどうするのよこれ。」

 

こうた「たのむ、いい感じに隠しといてくれ!」

 

Yちゃん「ん〜こうたの頼みならそうするか〜」

 

こうたはずいぶん軽いテンションで話すな、と思った。

すさまじく重い話だし、当時仲良かったとはいえ久々に会う人にこんな話してもいいのか。

 

こうた「てかさ!このあと久々にカラオケでもいこうぜ〜」

Yちゃん、Kちゃん「いいよ〜」

 

そんなこんなで話は変わり、

朝までカラオケいって飲んで騒いでみんなでタクシーに乗って帰宅した。

 

….

 

その飲み会以降、こうたからの連絡が急に途絶えた。

 

年末年始の飲み会まではインスタのストーリーも時々更新していたし、

インスタで反応してあげるとすぐに返信が来ていた。

 

それが急に返信も来ないし、LINEも連絡が取れないのだ。

ブロックなどはされていない。

 

やけに軽く、自分の罪について話すなという自分の違和感が

現実になってしまった気がした。

 

じつはタクシーに乗って帰るとき、Yちゃんとは帰る方向性が途中まで一緒だったので二人きりのタイミングで、こうたのことを少し聞いていた。

 

俺「こうたさ、人身売買とか誘拐とか言ってたけどあれまじなの?」

 

Yちゃん「わかんない。でもそっち系の人からはさ『あいつ、1000万持って事務所から逃げた。場所教えろ』って言われてて。こうたが言ってる話とだいぶ食い違うんだよね」

 

俺「まじか」

 

そっち系の人が人のことを探す時にほんとのことをいうのか俺にはわからないが

だいたいこういうのは逃げてる方にもある程度やましい理由があるはずだ。

 

あいつ、今でも生きているだろうか。

もしかして追われていること、死ぬことを察知して最期に俺らに会いに来たのではないか。そんなドラマやアニメみたいなことあるのか。

 

それから1年経つが、いまだに連絡は取れていない。

こうた、元気でな。